経済評論家の父から息子への手紙

読書

こんにちは.

今年一月に亡くなられた経済評論家の山崎元さんの著書「経済評論家の父から息子への手紙」の書評です.

この本は山崎さんの真理をついた鋭い意見の中にも父親が息子に語りかけるような愛情を感じる良書でした.

マネーリテラシーにとどまらず,職業人としての姿勢,人間関係にまで幅広く山崎さんの意見が述べられております.
食道癌の再発がわかり余命3ヶ月と宣告された時点から執筆されましたので人生終盤を迎えてどのような人生が幸せなのか,そのためには今何をすべきかという観点から書かれています.

どの世代の方も面白く読めると思いますが特に18から35歳くらいの人に刺さる内容だと思います.

お金の話は控えめに 

山崎さんといえば「ほったらかし投資術」が代名詞であり,インデックスファンドへの積み立て投資を推奨されてきました.

特に投資のスタンスとしては「長期・分散・低コスト」であることが3原則とこれまでも提唱されていました.
リベラルアーツ大学の両学長も同じ内容を発信されており投資を勉強し始めた人は聞き馴染みがあるのではないでしょうか.

ただこの本では基本スタンスは崩さず触れられていますが,それよりももっと大きな枠で働き方や人材価値の高め方についてより熱量をもって語られている印象を受けました.
それこそ山崎さんの息子世代,これから社会に出る大学生や社会人駆け出しの人へのメッセージが強く意識されています.

リスクを取らない人生もリスクであること

人間は変化を嫌う習性があります.
しかし変化せずに現状維持でいることは危険であるとこの本は伝えます.

社会人になり同期と比較されることで悪目立ちすることを避ける人が多いと思います.
そんな人に向けて山崎さんは以下のよう以下のような言葉を送っています.

自分自身が「他人と取り換え可能な労働者」にならないような工夫が必要だということだ.
労働者に限らず,工夫のない人は損をする.これは,責任論以前の経済の現実だ.他人と同じであることを恐れよ.無難を疑え.

p.88より引用

山崎さんは12回の転職経験があり,一つの組織の中で無難に過ごすことを避けてきたのでしょう.

常に自分の人材価値を客観的に見つめて,他人と取り換え不可能な付加価値を身につけるための努力は必要です.

リスクを取らない(他人と同じで無難な)人生もリスクである.

幸福な人生とは 山崎元流の幸福論

末期の食道癌を患い,人生の最後を意識した山崎さんは最後の章で幸福論について書かれています.

結論から先に書くと

父はこの問題に暫定的な結論を得た.人の幸福感はほとんど100%が「自分が承認されているという感覚」(「自己承認感」としておこう)でできている.そのように思う.

p. 148より引用

経済評論家としてお金を稼ぐことを主として執筆されてきた山崎さんが最後に辿り着いた幸せの結論はお金持ちになることではなく,自分を認めてあげられる,他人から認められているという感覚ということは面白いですね.

ありきたりな言葉ですがお金はあくまで幸せになるツールの一つであり本質ではないことが再確認されました.

そして自分の世界に引きこもり自分で自分を認めることに満足する訳ではなく,他者との関わり合いの中で自分が認められているという感覚が幸福を高めると述べています.

職場で正当な評価を受けられず,家庭でも虐げられているオジサンは幸せそうではないですよね.
そうならないための対策も山崎さんは書いてくれています.

自分で自分の意思決定を自由に行うことができるようになるためには,複数の場を持つことが重要だ.一つの「学会」,「会社」などに没入し過ぎることは問題だ.

p. 161より引用

仕事だけに自分の価値基準を基準をおいてしまうとそこで評価されなくなると一気に自己承認感が低下します.
「仕事」,「家庭」,「友人」など複数の自分を評価してくれる場所を複数持っているとどこかがうまくいかなくてもどこかがカバーしてくれるはずです.
この考え方は投資のアセットアロケーションと似た考え方だと思いました.

まとめ

この本を読んでみて山崎さんの読者への愛と人生の集大成を迎えての結論だと思います.
もともと息子さんが高校を卒業する際に送ったお祝いの手紙をベースにこの本は着想されました.
そのため実の父親が息子に向ける温かい視線を読んでいて随所に感じました.

また幸福な人生を送るためにどのような働き方,お金との向き合い方をすればよいか山崎さんなりの結論を書いてくれた本だと思います.

いつか自分も子供の節目にお祝いの手紙を書いてあげたいと思いました.

ではまた!

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