くも膜下出血の重症度分類 H&H, WFNS, PAASH それぞれの特徴を解説

医学

くも膜下出血の分類は色々ありますよね。

Hunt & Hess分類 (H&H分類)やWorld Federation of Neurosurgical Surgeons分類 (WFNS)、Prognosis on Admission of Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage (PAASH) scaleが挙げられます。

それぞれについて特徴を書いていきます。

結論:一番よく使っているのはHunt & Hess 分類

まずは結論から述べるとH&H分類が一番よく使うんじゃないでしょうか。

ただ複数の分類を用いて重症度を検討することはgradeの境界に該当する症例では有用です。

明らかに軽症なものや重症なものは分類によってgradeが変わることはないからです。

重症度分類の元祖、Hunt & Hess (H&H)分類

H&H分類は1968年に提唱され、重症度分類の「元祖」と呼べる存在です。

脳卒中ガイドラインより

頭痛、意識、神経症状などから重症度を分類しますが、記述が曖昧で判定者によってばらつきがあることも特徴です。

未破裂脳動脈瘤(grade0)と、くも膜下出血の兆候がない(gradeⅠa)を追加したHunt & Kosnik (H&K)分類もあります。

脳卒中ガイドラインより

grade0〜Ⅱで予後が変わらないなどの問題点も指摘されています。

古くからある分類のため問題も指摘されますが、その分エビデンスも蓄積されています。

日本の脳卒中ガイドラインでも重症度分類ではH&H分類が重症度分類として使われています。

GCSと神経症状で分類するWFNS分類

SAHの予後は意識障害の程度、麻痺、失語に影響されるという大規模研究の結果から作成されたのがWFNS分類です。

脳卒中ガイドラインより

GCS、麻痺、失語の3つで重症度を分類します。

H&Hよりもより客観性が高いということが特徴です。

ただ、gradeⅣのGCSが7-12と幅が大きく、同じgrade内で重症度に差がある可能性も報告されています。

またgrade数上昇と予後不良患者数の増加が一致した変化をしないという特徴もあります。
gradeⅠを対象としたⅡからⅤのオッズ比は2.3、6.1、7.7、69.2とバラツキがある報告がありました(van Heuvenら 2008)。

GCSだけで評価するPAASH分類

Prognosis on Admission of Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage (PAASH)分類はGCSのみで重症度を分類するシンプルな方法です。

WFNSと比較すると同じGCSでもgradeに違いがありますね。

WFNSでgradeⅣに該当するGCS11もPAASHだとgradeⅡになります。

WFNSの問題であったgrade数の上昇と重症患者数の相関はPAASHのより均等なオッズ比の推移をみせます。

gradeⅠを対象としたⅡからⅤのオッズ比は3.9、15.9、30、84と上昇しました(van Heuvenら 2008)。

以上のことからPAASH分類はシンプルでありながら正確な重症度判定ができる可能性があります。

まとめ

H&Hは歴史があり、頻用されるが判定基準が少し曖昧。

WFNSは客観的な判定基準だが、同じgradeの中で重症度の差がある可能性がある。

PAASHはGCSのみの判定基準でシンプルかつ比較的正確に重症度を反映する。

van Heuvenら:Stroke 39:1347, 2009

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