脳外科医がスマホ脳を読んでみた。

こんにちは。

昨年、刊行され瞬く間に世界的ベストセラーになった『スマホ脳』を読んでみました。

著者のアンデシュ・ハンセンさんはスウェーデンの精神科医であり、
前作の『一流の頭脳』も世界的ベストセラーとなっています。

ずっと気になってはいましたがなかなか読めていなかったので読書感想文も兼ねて
今回まとめてみたいと思います。

スマホの中毒性

できるだけ長い時間その人の注目を引いておくにはどうすればいい?
人間の心理の弱いところを突けばいいんだ。
ちょっとばかりドーパミンを注射してあげるんだよ。
                      ーショーン・パーカー(Facebook社元CEO)

スマホ脳 68ページより

文字だけを見るとかなり恐ろしいですよね。
ただ自分でも振り返ると、
やらなきゃいけない事があってもついスマホに手を伸ばす、特に必要もないけどスマホのロックを外してしまう
こういった行動をよくとってしまうなと思います。
これは中毒の症状ですよね・・・

何が人間をスマホ中毒にしているのか?
それには著者はドーパミンという神経伝達物質の影響が大きいと述べています。
ドーパミンはよく報酬物質と言われています。
ドーパミンは人間が行動を起こすためのエネルギーとなります。
スマホからの通知が来たときに人間は中身を確認したいという衝動に駆られます。この衝動がドーパミンです。

この報酬系を強く刺激するのは行動を起こした際に得られる結果ではありません。
行動を起こすと「何かが起こるかもしれない」という「かもしれない」という期待が脳の報酬系を最も強く刺激します。

この「かもしれない」の報酬系をスマホは巧みに利用しています。
スマホの通知が来ると人間は「何か重要な情報が送られてきたかもしれない」と報酬系を駆り立てます。
特に用事がなくてもスマホを触ってしまうのは「何か有用な情報に出会えるかもしれない」という期待によるものです。

SNSのメンタルヘルスへの弊害

人間は本能的に社交性を持っています。協力することで外敵から身を守り子孫を反映させてきました。
そしてグループを作ることで「自分たち」と「他者」を分けて認識するようになりました。
原始時代は人間の死亡理由として他の人間から殺害されることが最も多いという報告があります。
相手を比較し、「自分たち」なのか「他者」かを識別することは重要課題でありました。

この社交性と比較は現代の私たちにも強くインプットされており、そこから逃れることは難しいです。
SNSはこの本能を最大限に利用した産物です。

ダンバー数というものがあります。これはオックスフォード大学の進化心理学社ロビン・ダンバー氏が
掲げたテーマで人間は親しくなれる人数に限りがあり、それは150人程度というものです。
狩猟採集民だった祖先は最大150人程度のグループで行動しており、社交性も比較もこの人数の中で行われていました。

しかしSNSを利用する現代人はどうでしょう?
SNSで繋がっている人数はこの数字より多いかもしれません。
実際の知人ではなくても芸能人などのインフルエンサーを含めると莫大な数の人と現代人は繋がっています。
この多数の他者との際限のない比較が現代人のメンタルヘルスを侵していると考えられます。
インスタグラムからは華やかに彩られた他者の週末が届けられ、自分の日常と比較されます。
常に多種多様な比較対象が届けられてしまい、現代人の脳は疲弊してしまいます。
しかも先ほど述べた「新しい情報があるかもしれない」報酬系により、SNSを人は利用し続けてしまいます。皆さんも理由もなくSNSを見続けて、ひとしきり見た後に何かモヤモヤとした感情を覚えたことはないでしょうか?

運動が大事

報酬系によるスマホ中毒、SNSによるメンタルの疲弊。現代人の脳はスマホというテクノロジーで常に攻撃を受けています。それではどのように対抗すればいいのでしょうか?

著者は運動こそが最大の対抗策と提案しています。
ある実験では300人に1週間万歩計をつけてもらうと、よく動いた人ほど集中力が増したそうです。
さらに著者は大人や子供を対象にした運動とストレスに対する実験でも運動量が増えるにつれ、
ストレスが軽減するという実験も報告しています。

では、なぜ運動が我々の集中力を増したりストレスを軽減させるのでしょうか?
狩猟民であった我々の祖先はよく運動をしていたという仮説をあげています。
狩りという運動は最大限の集中力が必要であり、脳の基本的な構造は祖先と同じ現代人でも
運動を通して集中力が高まるのだろうということです。

ストレスに関してはなぜでしょう?命の危険のある狩りはストレスがかかるはずなのに、逆にその運動がストレスを減らしているのは不思議に思います。
著者の考察では運動をすることで個体のコンディションは上がります。コンディションが整っている個体ほど外敵を倒したり、うまく逃げることができたりしたはずです。運動しコンディションをあげている個体はストレスにうまく対処できるという考えを提示しています。

まとめ

著者のアンデシュ・ハンセンさんは、論文や研究の引用が多く論理的に話を展開していくため理解しやすかったです。スマホやSNS中毒の原因は狩猟民である祖先まで遡る人間の本能を巧みに利用されているというのは恐ろしいですね。抗いがたい中毒性をもつスマホですが、その原因は本能であるとメタ認知することで上手くつきあっていきたいと思います。

また興味深い本があれば紹介したいと思います。

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