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高齢化に伴い、心房細動を有する患者さんの割合は増えてきています。
日本循環器病学会の疫学調査では2020年の推定患者数は100万人と言われています。
心房細動はcommon diseaseであり、その管理は非専門医の先生も避けては通れません。
そこで今回は心房細動の抗凝固薬の使い分けを解説していきます。
結論を言うと
プライマリ・ケア医はワルファリンと、1つのNOACが使いこなせればよい。
心房細動の抗凝固療法 プライマリ・ケア医のためのシンプルアプローチより
今回参考にした書籍は以下のものです。
どちらも非循環器内科医でも分かりやすく書かれているのでオススメです。
またNOACとDOACどちらで呼ぶか問題ですが、
個人的にはDOACと呼んでいます。
発売当初は新規経口抗凝固薬NOAC(new oral anticoagulants)と呼ばれていましたが、すでに発売から10年以上経過しているので直接経口抗凝固薬DOAC(direct oral anticoagulants)と呼ぶ方が自然な気がします。
ワルファリンとDOACどっちを使う? メリット、デメリットは?
最近ではDOACの登場回数が多くてワルファリンの出番が減ってきている印象があります。
ただ、ワルファリンにもDOACより優位な点もあり、それを理解して使い分けるといいですね。
まず、大前提としてDOACには「弁膜症性」心房細動には適応がありません。
弁膜症性心房細動とはリウマチ性の僧帽弁狭窄症や生体弁置換術後の場合です。
DOACの適応がない患者さんがいるので小田倉先生は「ワルファリンと使い慣れたDOACが一つあればよい」と説明されているのでしょう。
ワルファリンのメリット ・歴史がありエビデンスが蓄積されている。 ・腎機能を考慮しなくてもよい。 ・薬価が安い。
ただ、DOACの適応があり、薬価を気にしなくていい患者さんならあえてワルファリンを選ぶ必要性は乏しいです。
ワルファリンのデメリットとともに解説していきます。
ワルファリンのデメリット ・PT-INRの調整が必要→DOACなら細かな容量調整は不要 ・食事制限(納豆などが食べられない)→DOACは食事制限なし ・半減期が長い(40時間前後)→DOACは12時間前後
やはり食事を気にしなくていい点や、受診のたびにPT-INRによる容量調整が不要な点はDOACが使いやすいですね。
DOACはワルファリンより合併症が少ない? RCTとリアルワールド
DOACを使用可能な心房細動患者では、ワルファリンよりもDOACを選択するよう勧められる。
脳卒中ガイドライン2021より
(推奨度A エビデンスレベル低)
DOACとワルファリンの効果と安全性を比較したRCTでは、脳卒中やその他の塞栓症発現率は両者に差がありませんでしたが、頭蓋内出血は有意に少なかったです。
ただ消化管出血はダビガトラン 、リバーロキサバン 、エドキサバン で増加しました。
コホート研究などのリアルワールドデータでもRCTと概ね同様の傾向を示しました。
ただDOACの不適切な低容量投与(高齢であるため等)や腎機能障害のある高リスク群には投与されないなど厳格に条件を揃えたRCTにはないバイアスがリアルワールドデータにもあることは注意しないといけません。
まとめ:薬価を気にする必要がなく適応ないならDOACを使いましょう
特に薬代を気にしなくてよく、適応内ならDOACの導入がベターです。
ただ弁膜症性心房細動ではワルファリンしか使えないので両方使えることが一番ですね。
次回はDOACの使い分けについて解説していこうと思います。
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