前回に引き続き,今回はDOACの使い方について解説していこうと思います.
DOACは4種類あります.
ダビガトラン :商品名プラザキサ リバーロキサバン :商品名イグザレルト アピキサバン:商品名エリキュース エドキサバン :商品名リクシアナ
4種類あり,どれを選んでよいか迷います.
しかし結論は「種類はどれでもいいから使い慣れた1剤があることが重要.」
薬剤間で圧倒的な有意差がつくような種類があれば,薬剤選択の議論が起こることはないですよね.
現時点ではワルファリンとDOACの比較のRCTはあってもDOAC間で比較したRCTはありません.
それでもどれかを選びたい. DOAC選択の考え方.
記事の冒頭でDOAC選択はそこまで難しく考えずにどれでもいいと説明しました.
ただ,これから患者さんにDOACを導入する時にある程度の根拠をもって提案したいですよね.
前回の記事でも紹介した小田倉先生の書籍に薬剤選択の考え方が紹介されていました.
DOACを選べる状況であれば, 服薬回数, 消化管出血の既往, 腎機能の順で選択肢を考える.
p.123より
- 服薬回数
DOACはアドヒアランスが重要です.半減期も大体12時間前後で短く,飲み忘れや怠薬には注意が必要です.
1日1回内服を希望されればエドキサバン かリバーロキサバン を選択します. - 消化管出血の既往
1日2回でもいいっていう患者さんは消化管出血の既往を確認しましょう.
既往があるならアピキサバンを選択します. - 腎機能
上記1, 2をクリアして腎機能良好(CrCL 50mL/分以上)ならダビガトラン .
腎機能が若干低下しているならアピキサバンを選択します.
DOACの使い分けでも重要事項 減量基準について
DOACの使用にあたって減量基準をきちんと確認することは重要です.
確認事項としては
腎機能,年齢,体重,消化管出血の既往,併用薬
です.
以下に各薬剤の用法・用量と減量基準を記載しています(2021年12月現在).
ダビガトラン (プラザキサ®︎) 150mg, 110mg 通常150mg×2 下記の1つ以上で110mg×2へ減量 ・CrCL 30~50mL/分 ・70歳以上 ・消化管出血の既往 ・P糖蛋白阻害薬(ベラパミル, アミオダロン, キニジン, タクロリムス, シクロスポリン, リトナビル, ネルフェナビル, サキナビル)
リバーロキサバン (イグザレルト®︎) 15mg, 10mg 通常15mg×1 下記の場合, 10mg×1へ減量 ・CrCL 15~50mL/分
アピキサバン(エリキュース®︎) 5mg, 2.5mg 通常 5mg×2 下記の2つを満たす場合 2.5mg×2へ減量 ・80歳以上 ・60kg以下 ・Cr 1.5mg/dL以上
エドキサバン (リクシアナ®︎) 60mg, 30mg, 15mg 通常:60mg×1 下記の1つ以上で30mg×1へ減量 ・60kg以下 ・CrCL 15~50mL/分 ・P糖蛋白阻害薬(キニジン, ベラパミル, エリスロマイシン, シクロスポリン) 出血リスクの高い患者は年齢,状態に応じて15mg×1へ減量も可能
リバーロキサバン 以外は腎機能以外にも条件がありやや複雑ですね.
高齢者で腎機能がCrCL 50mL/分ギリギリなど実臨床では迷う症例も多いです.
基準は満たしていても早晩腎機能が低下してくる可能性が高い場合などは減量して処方することも多いです.
ただ重要なことは, 基準を全て満たしている症例に対しては塞栓症のリスクが増加するため減量しないということです.
高齢者で腎機能がギリギリ基準値に近い場合は低用量を, 全ての基準を満たし, 特に腎機能が十分良好な場合は必ず高用量を用いること
心房細動の抗凝固療法 p147より
まとめ:非専門医はワルファリンとDOAC1つが使えれば十分
冒頭でも書きましたが, ワルファリンとDOACのどれか1つが使えれば十分です.
もし, 選択する必要があれば服薬回数, 消化管出血の既往, 腎機能を参考にして選択します.
基準内であれば, DOACは減量せずに使用することが重要です.
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